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スモールビジネスハンドブック
不況を勝ち抜く事例企業に学ぶこれからの企業価値経営

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編者: 鯨井 基司・坂本 恒夫・林 幸治
著者: 中小企業・ベンチャービジネスコンソーシアム
定価: 2,520円(税込)
発行: 2010年4月
A5版・277頁

様々な経営手法を用いたり、新しい試みを実行して企業価値を向上させている中小企業群を「スモールビジネス」と位置付け、実際の二十数社の企業の事例を織り込み論究。
経営戦略、労務、法務、財務、会計、M&Aなど多岐にわたる切り口からのアプローチは、厳しい環境下でも持続的に発展する企業の可能性を示唆している。

中小企業・ベンチャービジネス コンソーシアムのホームページ

編著者略歴

鯨井 基司(くじらい もとじ)
1936年茨城県生まれ。現在、有限会社鯨井会計取締役、税理士・社会保険労務士、<中小企業・ベンチャー>ビジネスコンソーシアム会長。
主な著書:『90年代の医業経営』(税務経理協会、1991年)、『中小企業の再生ビジネス戦略』(共著、税務経理協会、2001年)、『ベンチャービジネスハンドブック』(共著、税務経理協会、2008年)ほか。

坂本 恒夫(さかもと つねお)
1947年京都生まれ。経営学博士。現在、明治大学経営学部教授、副学長(研究担当)、<中小企業・ベンチャー>ビジネスコンソーシアム副会長、経営分析学会会長。
主な著書:『企業集団財務論』(泉文堂、1990年)、『中小企業の再生ビジネス戦略』(共著、税務経理協会、2001年)、『成長戦略のための新ビジネス・ファイナンス』(共著、中央経済社、2008年)、『スモールビジネスの財務』(共著、中央経済社、2009年)ほか。

林 幸治(はやし こうじ)
1972年神奈川県生まれ。経営学博士。現在、大阪商業大学総合経営学部専任講師、<中小企業・ベンチャー>ビジネスコンソーシアム理事。
主な著書:『スモールビジネスの財務』(共著、中央経済社、2009年)、『成長戦略のためのビジネス・ファイナンス』(共著、中央経済社、2008 年)、『M&A戦略のケース・スタディ』(共著、中央経済社、2008年)ほか。

執筆者一覧(執筆順)

坂本 恒夫 (明治大学経営学部教授) 第1章
伊藤 忠治 (諏訪東京理科大学経営情報学部教授) 第2章
正田 繁 (ファイナンシャルブリッジ㈱取締役) 第3章
落合 孝彦 (青森公立大学経営経済学部准教授) 第4章
大坂 良宏 (石巻専修大学経営学部教授) 第5章
小野 喜章 (行政書士小野喜章事務所代表) 第6章
鳥居 陽介 (諏訪東京理科大学経営情報学部助教) 第7章・18章
鯨井 規功 ((税)鯨井会計代表社員) 第8章
野中 政宏 (人事・労務リサーチ&コンサルティング代表) 第9章
古山 徹 (日経メディアマーケティング㈱顧客サポート部) 第10章
福島 章雄 (成城大学経済研究所研究員) 第11章
林 幸治 (大阪商業大学総合経営学部専任講師) 第12章
中西 正行 (藍澤証券㈱投資リサーチセンター) 第13章
五十嵐 久 (中小企業診断士) 第14章
杉浦 慶一 (㈱日本バイアウト研究所代表取締役) 第15章
平田 博紀 (共栄大学国際経営学部専任講師) 第16章
趙 丹 (朝鮮大学校経営学部助教) 第17章

本書で取り上げている事例企業一覧(五十音順)

㈱石井文庫(第14章) 東京都新宿区 http://www.tatsujin.co.jp/information/company.html
㈲イハラ工業(第18章) 長野県茅野市 http://kougyou.chinoshi.jp/syousai.asp?kigyouid=64#ptop
㈱エイムテック(第5章) 熊本県熊本市 http://www.aim-tech.co.jp/
㈱オーヤマハウジング(第17章) 京都府京都市 http://www.ohyama-h.co.jp/
上北農産加工農業協同組合(第4章) 青森県十和田市 http://www.kamikitanousankakou.or.jp/public_html/
㈱北川製作所(第16章) 神奈川県横浜市 http://www.kgworks.co.jp/
㈱木村電気工業(第15章) 東京都北区 http://kimuradenki.co.jp/
鯨井会計グループ(第8章) 茨城県つくば市 http://www.kujirai-kaikei.com/index.html
㈱クロスランゲージ(第9章) 東京都千代田区 http://www.crosslanguage.co.jp/
三州製菓㈱(第12章) 埼玉県春日部市 http://www.sanshu.com/
㈱サンメディカル技術研究所(第2章) 長野県諏訪市 http://www.evaheart.co.jp/
㈱ジュピターテレコム(第10章) 東京都千代田区 http://www.jcom.co.jp/corporate.html
㈱スワラクノス(第7・18章) 長野県茅野市 http://www.raqnos.co.jp/index.html
㈱センテック(第5章) 大阪府枚方市 http://www.sentech.jp/
㈱大和生物研究所(第18章) 神奈川県川崎市 http://www.daiwaseibutu.com/
高島産業㈱(第7章) 長野県茅野市 http://www.takashima.co.jp/
㈱タクト(第18章) 長野県茅野市 http://www.takt-nagano.co.jp/
(独)中小企業基盤整備機構(第11章) 東京都港区 http://www.smrj.go.jp/
㈱日本デジタル家電(第6章) 静岡県浜松市 http://www.rokuraku.com/
日立キャピタルコミュニティ㈱(綾瀬SCおよび権太坂スクエア)(第3章)
東京都千代田区 http://www.hitachi-capital-community.co.jp/
ファイナンシャルブリッジ㈱(第3章) 東京都品川区 http://www.financial-bridge.co.jp/
㈲深井製作所(第18章) 長野県茅野市 http://www.lcv.ne.jp/~fukai/
増永眼鏡㈱(第1章)福井県福井市 http://www.masunaga-opt.co.jp/
丸文水産加工㈱(第13章) 神奈川県三浦市

主な内容

第1編 経済・経営環境の変化とスモールビジネス

第1章 スモールビジネスとは何か
第2章 スモールビジネスは産業構造の変化へどのように対応すべきか
第3章 スモールビジネスの価値創
第4章 スモールビジネスと地域経済の振興

第2編 スモールビジネスの付加価値戦略
第5章 スモールビジネスの知的財産
第6章 スモールビジネスの知的財産の活用と留意点〜訴訟
第7章 スモールビジネスの製品開発とマーケティング
第8章 スモールビジネスの会計
第9章 中小企業の人材戦略とワーク・ライフ・バランス

第3編 金融環境の変化とスモールビジネス
第10章 スモールビジネスの資金調達と運用の特徴
第11章 スモールビジネスにおける直接金融の活用
第12章 スモールビジネスの社債ファイナンス
第13章 スモールビジネスと新たな担保融資−ABL
第14章 スモールビジネスの信用保証協会の活用

第4編 新たな企業・経営環境とスモールビジネスの課題
第15章 スモールビジネスのM&A
第16章 スモールビジネスの事業承継と第二創業
第17章 スモールビジネスと経営理念
第18章 スモールビジネスとステークホルダー価値経営

はじめに

アメリカのサブプライムローン問題を契機に、世界経済は大きな影響を受け、株価や投資資産価値の暴落、個人の購買力の減少による消費の低迷によりデフレ化をもたらし、多くの企業業績は悪化している。
2008年、アメリカのリーマンブラザーズが破綻したことを契機とし、世界的な金融危機へと拡大した。アメリカの消費は大きく減退し、輸入は急減した。その結果、アメリカを中心とした輸出によって支えられてきたわが国は、世界経済の低迷による輸出の急減によって景気が大きく落ち込むことになった。特に自動車などの輸出型産業は生産の減少と業績の悪化に直面した。さらに、このような企業の業績悪化は雇用面にも波及し、2008年末には非正規労働者の雇い止め問題が表面化することにもなり、日本経済の景況の悪化は国民の生活不安を増長させ消費の低迷へとつながった。株価の下落、投資資産価値の下落、不動産価格の下落等の影響を受けて企業金融は厳しさを増し、中小企業の中には倒産に追い込まれるケースも多くみられた。このような景気の低迷は消費者の購買力にも影響が及ぶこととなり、製造業だけではなく全ての業種で業況は悪化した。
100年に一度の経済危機といわれる不況のなか、企業の多くは生き残りをかけた経営の手法を模索せざるを得ない。今回の経営環境の悪化は、従来型の経営から「低成長下における経営」へと新たな局面を迎えている過程において生じた事態である。産業構造の変化の中で、中小企業は新たな経営環境に適応した経営スタイルへと変化を遂げなければならない。輸出の減少、日本国内の需要の減少、人口の減少、経済刺激策のとれない政策などの現状を考慮すれば、日本経済は急激なV字回復は望めない。経済停滞が長引く状況の中、経営者は新たな視点で自社の経営資源の見直しを行い、事業、製品・商品、販売地域などあらゆる面において「選択と集中」の可能性を吟味し、不採算部門の撤退を決断するといった経営判断を行っていく必要がある。
たとえば、過剰設備を抱え、生産稼働率が30%以上にまで落ち込んだある企業は、従来の経営における判断基準の見直しを行っている。同社は、固定費・変動費をチェックし、管理が可能な経費と不可能な経費とに分け、経営者のコスト認識と現場管理者の認識を確認し、組織としてのコスト区分の把握とコスト管理を活用した新規製品開発に取り組み始めている。また、設備稼働率が落ち込んだ時期を活用して、社員研修に充ててもいる企業もある。労働や組織、コミュニケーションのあり方等、社員に対して基礎的な研修を行い、これからの経営方針の周知徹底やコスト削減に成果を上げているケースもみられる。このような稼働率の低下を利用し、低成長期に対応できる企業体質へと変化させるチャンスとして行動している企業も数多くある。
資金調達については”貸し渋り”や”貸はがし”といった兆候が見られ、売上の減少など業績の悪化にともない金融機関に対して融資条件の緩和を要求する中小企業もある。政府は2009年12月に金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)を改定して、金融機関から中小企業へ資金が円滑に供給されるように推進している。中小・零細企業の経営、税務面の特性や、零細企業に特有の融資形態を考慮し、企業の赤字や債務超過、貸出条件の変更等のみで債務者区分を行うのではなく、経営者の行動、社員の定着度、地域での売上シェア等の定性的な要因を考慮して債務者区分を行うよう、同マニュアルは金融機関に求めている。これまで経営者は資金繰りを中心とした近視眼的な経営を行わなければならなかったが、このマニュアルの改定により長期的な経営改善計画が可能となった。この結果、「企業格付」が向上した企業も出てきており、金融機関から返済期日の繰延べや返済条件の変更を受け、前向きな経営改善に取り組むことができる企業も出てきた。また、金融機関側も地域経済における役割を再認識し、年商9億円弱の小規模な企業の民事再生手続に対して、企業の特性を重視して認可決定の協力を行ったケースもある。企業の中には、金融機関への情報開示を行い、経営者自らが中心となり長期事業計画を作り、可能な額の範囲で返済条件の緩和等を積極的に申し込み、運転資金確保に努め、新たな収益部門の開発に取り組んでいるものもある。
「人」に関しても、厳しい経済環境をチャンスととらえ、社員の育成を目指し改めて研修を行うケースもある。経営に関する基礎的な知識、営業の知識、現場レベルでの知識等を修得させるための研修を実施して社員のスキルアップを図り、縮小するマーケットでの生き残り、そして成長を目指す企業もあるのだ。
このような厳しい経営環境下において倒産に追い込まれる企業もあるが、その一方で独自の手法で経営を行って注目を集め、成長している企業が存在していることも事実である。今回の不況に対応し、経済停滞期に即した経営モデルを取り入れている企業が登場しているのである。これらは、様々な経営手法を用いたり新しい試みを実行したりして「企業価値」を向上させている企業であり、このような企業群を、単なる規模の小さい意味での”中小企業”と分けて、ここでは”スモールビジネス″と呼ぶことにしたのである。
このような状況認識の下で編纂され、刊行される本書においては、多様なアプローチで数多くの”スモールビジネス″の事例を紹介している。この多様なアプローチこそが本書の1つ目の特徴であるといってもよいであろう。経営戦略、労務、法務、財務、会計、M&Aなど、多岐に渡る切り口から現在の不況下でも頑張っている企業を紹介することで、今、企業経営に何が求められ、これから先に何が必要なのかを提示できればと考えている。
本書は4つの編、18の章で構成している。
第1編「経済・経営環境の変化とスモールビジネス」の第1章から第4章では、スモールビジネスの基本的な概念について述べている。スモールビジネスとは何か、注目されている背景や歴史的および制度的な視点から見た変遷、スモールビジネスの価値創造のための方法やスモールビジネスと地域活性化といった切り口で、スモールビジネスの基本的な議論につい述べている。
第2編「スモールビジネスの付加価値戦略」の第5章から第9章では、法務、製品開発・マーケティング、会計、人事労務という経営学の基本的な切り口から議論している。経営学の切り口は多岐にわたっており、ここでは特にスモールビジネスがこれから重要視すべき論点に焦点を当てた。スモールビジネスの知的財産戦略の必要性や留意点、製品開発からマーケティングを一連の流れで行う戦略の重要性、経営者の意思決定に加えて従業員の動機づけのための会計制度の導入、企業業績の維持・向上のための戦略的人材マネジメントの必要性について述べている。
また、第3編「金融環境の変化とスモールビジネス」の第10章から14章では、企業の財務に関する議論を中心に扱っている。スモールビジネスの財務について資金調達の現状とその問題点を把握し、直接金融におけるベンチャーファイナンスと社債ファイナンスの活用について、そして間接金融における新たな借入手法であるABLとスモールビジネスが利用している信用保証制度の実態と問題点について述べている。スモールビジネスの財務に関する議論は今後も重要なテーマの1つであると考え、紙面を多く割いている。
そして、第4編「新たな企業・経営環境とスモールビジネスの課題」の第15章から第18章では、スモールビジネスが今後さらに成長するために何が必要であるかを議論している。スモールビジネスが活用できるM&A戦略、事業承継を第二創業という発想でとらえることの重要性、スモールビジネスの存続と新たな成長のための理念経営の実践、そして、ステークホルダー価値経営の必要性といった点について議論しており、これらは今後スモールビジネスが成長するために必要な概念となるであろう。
本書の2つ目の特徴として、各章で内容に即した実際の企業を紹介しており、これにより読者の理解が一層深まることを期待している。本書の内容と事例を通じて、スモールビジネスの経営者および従業員の方々が、実際の企業経営に活用できるアイデアを見出す機会、もしくは企業経営を改善する契機となること、さらには、研究者に何らかの示唆を与えることができたならば、我々にとってこの上ない喜びである。また、スモールビジネスに関心のある社会人や大学生、大学院生も、具体例を通じてスモールビジネス経営の実態と今後の展開を学ぶことができよう。
本書は、中小企業・ベンチャービジネス コンソーシアムの設立10周年を記念して刊行するものである。同コンソーシアムは、「自立的な改革を進める中小業やITを基礎に勃興するベンチャービジネスを支援すると同時に、これらの学術研究を促進し、会員相互の情報交換を行うことによって、中小企業の経営改革とベンチャービジネスの成長持続を支援することを目的」として設立された。経営者、実務家、起業家、研究者など会員は多岐にわたっており、本書の執筆者は皆、同コンソーシアムの会員である。これまでの10年間の活動の成果の1つとして本書を出版できることは、これまでの年次大会や部会でご講演いただいた方々、そして何より会員の方々のご協力の賜物である。この場をお借りして御礼を申し上げる。
また、本書の執筆に際し、多くの企業へのインタビューを行っており、関係者の快いご協力をいただいた。併せて心より感謝を申し上げたい。
 最後に、出版事情の厳しい中、本書の発行を引き受けてくださり、完成まで尽力してくださった株式会社ビーケイシーの北村善三社長には深く謝意を表したい。

2010年4月
編者を代表して 鯨井 基司

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